ピロリ菌は正式にはヘリコバクター・ピロリと呼ばれている細菌で、人の胃粘膜の中で生息します。多くは乳幼児期に井戸水などから感染すると考えられており、一度感染すると胃の中に一生住み続け、自然にいなくなることは稀です。 
日本でのピロリ菌感染者数は3500万人に上り、若年者では衛生環境の改善により減少傾向であるものの、50歳以上では70％以上の人が感染しているとされています。

ピロリ菌は主に5歳までの幼少期に感染します。

ピロリ菌の2つの感染経路

• 井戸水からの感染（ピロリ菌に汚染された井戸水を飲むことで感染）
• 家族からの感染（ピロリ菌感染者の唾液から感染）

ご家族に胃がんを発症した方やピロリ菌除菌治療をした方がいる場合、感染している可能性があります。

ピロリ菌除菌治療の成功率は100％ではありません。治療後に胃の調子が良くなると「除菌できた」と思い込み、確認検査を受けない方がいらっしゃいます。

除菌が不完全だと、将来に胃がんを発症するリスクが高まります。除菌治療後は必ず成功したかどうかの確認検査を受けましょう。

40歳を過ぎて一度も胃の検査を受けたことがない方は、まず胃カメラ検査を受けることをおすすめします。専門医による胃カメラ検査では、ピロリ菌の有無を推定できます。若いうちにピロリ菌除菌をおこなえば、胃がんのリスクを大幅に下げることができます。ピロリ菌感染期間が長いほど胃の粘膜へのダメージが大きくなるため、早期発見・早期治療が重要です。

保険でピロリ菌の検査・除菌治療を受けるには、まず胃カメラ検査で萎縮性胃炎などを確認することが保険診療で定められています。胃カメラ検査をおこなわずにピロリ菌検査・除菌を希望される場合は、自費診療となります。

 

胃カメラ検査で胃がきれいな状態であれば、ピロリ菌に感染していないことがわかります。胃に萎縮が見つかった場合は、ピロリ菌感染の有無を確認するため追加検査をおこないます。

培養法	胃の組織を5～7日間培養してピロリ菌を調べる方法
迅速ウレアーゼ法	胃の組織にピロリ菌特有の酵素があるかを調べる方法
組織鏡検法	胃の組織を顕微鏡で観察してピロリ菌を直接確認する方法

尿素呼気試験	薬を飲む前後で息に含まれる二酸化炭素の量を測定する方法（精度が高く、除菌後の判定によく使用）
便中抗原測定	便からピロリ菌の成分を調べる方法
血液検査	血液中のピロリ菌に対する抗体を調べる方法

除菌治療終了の1～2か月後に、除菌できたかどうかの判定検査をおこないます。除菌判定には尿素呼気試験が最適です。

ピロリ菌感染が確認された場合、除菌治療をおすすめします。

一次除菌	胃酸を抑える薬1種類＋抗生物質2種類を1週間服用（成功率70～80％）
二次除菌	一次除菌で除菌できなかった場合、薬の種類を変えて再度1週間服用（成功率90％以上）

除菌薬の服用により、下痢、発疹、かゆみ、肝機能障害などの副作用が現れることがあります。アレルギー症状が出た場合は、すぐに服用を中止し当院までご連絡ください。